止血・血栓委員会
作成日:2013.09.18
更新日:2023.10.12
活動内容
本委員会は、先天性の止血・血栓異常ならびに小児血液・腫瘍性疾患等に随伴する後天性の止血・血栓異常に関して、病態の理解と診断・治療の改善を目指した活動を行うことを目的としております。また、その活動の一つとして、止血・血栓異常の症例相談、止血・血栓の研究の周知などを行うため、小児血友病診療ネットワークを運営しております。
01. 定期補充療法の有効性に関する臨床研究
血友病の止血治療は国際的にも出血時のオンデマンド療法から定期的に製剤を投与することにより出血を防いで血友病性関節症を予防する定期補充療法に変わりつつある。わが国では定期補充療法は正式には保険診療の対象になっていない。国際的に見ても、本治療が小児の血友病診療の中心になっている現状から、本研究による定期補充療法の臨床的意義に関するエビデンスを構築することは極めて重要である。本研究では至適開始年齢を決定する目的で当学会研究審査委員会の承諾を得て2005年3月開始し、現在も進行中である。
02. 小児血友病診療ネットワーク
わが国の血友病診療の特徴は約1000にもわたる診療施設で実施されていることがあげられる。これは、血友病治療センターを中心に診療されている海外とは大きく異なる点である。血友病診療の施設間格差を是正し、全国どこでも標準的な治療が受けられるように診療体制を構築することが急務である。そのためには、診療連携が必須である。そこで、本活動では小児の血友病患者の診療施設を調査し、診療連携ネットワークを構築し医療情報の発信や情報交換の基礎を確立することを目的に開始された。 診療ネットワークは全国を北海道、東北、関東北、関東南、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州北、九州南の12ブロックに分けそれぞれブロック長を決め、さらに、各都道府県別の代表者を決定した。現在、登録医師数は477名、306施設に達している。本ネットワークは、患者の転居、旅行、修学旅行時の診療情報の交換にきわめて有用なツールになっているが、最近は小児の凝固障害に関する問い合わせが増加しており、ネット上での検討が活発になっている。
なお、ネットワーク使用にあたっては以下の規約の遵守を原則とした。
- 本ネットワークは血友病診療の医療情報の交換や発信を目的とする。
- 本ネットワークは日本小児血液学会血友病委員会の活動である。
- 本ネットワークは参加者間のネットワークで一般に公表するものではない。
- 本ネットワークでの情報の交換においても患者様のプライバシーには十分配慮する。
2011.03.14に東北関東大震災際して、以下の文面で血友病診療ネットワークの利用が開始された。
「皆様、この度の震災による未曾有の被害について非常に心を痛めています。
血友病の医療に携わる先生方や病院、診療所、そして、血友病の患者さんの治療状況について非常に心配しております。この血友病診療ネットワークも東北関東地方の血友病診療に関する連絡の窓口など、何かお役に立てればと思います。
血友病治療製剤の供給など影響が出ているのではないでしょうか?
診療状況や者さんの受け入れ、製剤の供給など、問題や情報の発信などこのネットワークも利用していただければと思います。
日本小児血液学会血友病委員会 瀧 正志、嶋 緑倫」
1. 血友病診療関連情報の収集
- 血友病診療ネットワーク参加施設からの患者診療協力支援情報
- 学会からの支援情報
- 製薬会社からの製剤情報
2. 血友病診療関連情報の配信(2011.03.15 ? 2011.04.07)
収集した血友病診療関連情報を以下の3種類の情報として分類整理後news letter形式(pdf)で1日2回 09:00と18:00にreal timeに新着順に配信した。
- 血友病診療情報
医療機関向け情報
患者様向け情報(医療機関を通して) - 製薬会社からの製剤情報(No. 17まで)
<製品の供給および配送情報>
<製品の保管および保存情報>
以上を血友病診療情報はNo.20まで、製剤情報はNo.17まで、定期的に更新し、real timeでの配信に留意した。
04. カテーテル管理に関するガイドライン作成
我が国では血友病患者に対する凝固因子製剤補充療法や免疫寛容療法のための血管アクセスとして,中心静脈カテーテル(CVC)を使用することは現在のところ少ない.しかし,幼小児からの定期補充療法や家庭輸注療法の増加に伴い,今後CVCの利用率が増加する可能性があり,我が国におけるCVCガイドライン作成の必要性が論じられている.今回,今後のCVCガイドライン作成の参考資料として,まずはCVC使用の現状を把握するために血友病診療ネットワーク参加施設を対象にアンケート調査を実施した.調査結果は第52回日本小児血液学会で発表した。今後、アンケート結果をもとに中心静脈カテーテルに関するガイドラインを作成予定である。