COVID-19感染症

作成日:2020.04.13
更新日:2021.02.04

小児血液・がん疾患と新型コロナウイルスの診療に関連した論文や声明など

小児血液・がん疾患と新型コロナウイルスの診療に関連した論文や一般向けの声明などを紹介いたします。
論文や声明の翻訳や要約を当委員会で作成し、随時掲載していきます。

日本小児血液・がん学会 学術調査委員会


一般向け(学会や研究機関の声明やガイドラインの翻訳などを中心に紹介します)

2020 年4 月13 日掲載
Kotecha RS.

Challenges posed by COVID-19 to children with cancer.
Lancet Oncol. 2020 Mar 25. pii: S1470-2045(20)30205-9. doi: 10.1016/S1470-
2045(20)30205-9
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204520302059?via%3Dihub
翻訳版はこちら(この論文は全文を翻訳して掲載いたします)


2020 年4 月27 日掲載
COG statement

COVID-19 and Your Child, Teen, or Young Adult with Cancer
米国COG(Children’s Oncology Group)から小児・AYA世代の小児がん患者さんとその家族へのメッセージです
https://www.childrensoncologygroup.org/downloads/COVID-19_and_Your_Child_with_Cancer_English.pdf
翻訳版はこちら(この論文は全文を翻訳して掲載いたします)


Bouffet E, Challinor J, Sullivan M, Biondi A, Rodriguez-Galindo C, Pritchard-Jones K

Early advice on managing children with cancer during the COVID-19 pandemic and a call for sharing experiences
SIOP(International Society of Paediatric Oncology)とSt.Judeの関係者のcollaborationによるメッセージです。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/pbc.28327
翻訳版はこちら(この論文は全文を翻訳して掲載いたします)


2020 年5 月11 日掲載
小児/AYA 世代がん経験者のための新型コロナウイルス感染症に関する IGHG からの声明

IGHG:International Late Effects of Childhood Cancer Guideline Harmonization Group(国際小児がん晩期合併症ガイドライン調整グループ)による、小児/AYA世代がん経験者の方々への、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクや、追加予防策に関する指針の日本語版です。
https://www.ighg.org

医療者向け(論文の要約などを中心に紹介します)

2020 年4 月27 日掲載
ASH FAQ

ASH(American Society of Hematology)から示されたCOVID19と小児ALLに対するFAQ (Frequently Asked Questions)です。
https://www.hematology.org/covid-19/covid-19-and-pediatric-all
翻訳版はこちら(このFAQは全文を翻訳して掲載いたします。北大小児科の原和也先生、真部淳先生にご協力いただきました。)


Ogimi C, Englund JA, Bradford MC, et al.

Characteristics and Outcomes of Coronavirus Infection in Children: The Role of Viral Factors and an Immunocompromised State. J Pediatric Infect Dis Soc. 2019 Mar 28;8(1):21-28. doi: 10.1093/jpids/pix093.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6437838/
COVID-19パンデミック前(2012-2016)に検討された小児免疫不全患者におけるコロナウイルス(HCoV)感染症に関する論文です。シアトル小児病院で、鼻腔HCoV陽性かつ免疫不全状態の患者85例と非免疫不全状態の患者1152例の多変量解析では、免疫不全状態が重度LRTDの増加と関連していました(調整オッズ比、2.5 [95%信頼区間、1.2–4.9]; P = .01)。また、若年者、肺の基礎疾患およびRSウイルスの合併感染もLRTDまたは重度のLRTDと関連していました。HCoV株間の重症度の違いはありませんでした。


Liang W, Guan W, Chen R, et al.

Cancer patients in SARS-CoV-2 infection: a nationwide analysis in China. Lancet Oncol. 2020;21(3):335–337. doi:10.1016/S1470-2045(20)30096-6
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204520300966?via%3Dihub
中国における癌の既往のあるCOVID-19患者に対する調査です。COVID-19確定患者の癌の既往の割合は約1%と高く(全中国人では0.29%)、癌患者はCOVID-19のリスクが高い可能性があります。癌の既往のある患者は、ICU、侵襲的換気、死亡のような重篤イベントのリスクが高く、1ヶ月以内に化学療法や外科治療を受けた患者は重篤なイベントがより多い傾向にあります。著者らは、1.COVID-19の流行地では、安定した癌に対しては、補助化学療法や待機手術の延期を考慮すべき、2.癌患者および癌の既往のある患者には、より厳重な個人防護を提供すべき、3.癌患者がCOVID-19になった際には、より集中的な観察や治療を考慮すべきとの提案をしています。


Yang C, Li C, Wang S.

Clinical strategies for treating pediatric cancer during the outbreak of 2019 novel coronavirus infection.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pbc.28248
コロナウィルスのアウトブレークにおける小児がん患者の治療戦略に関して 中国の国立の小児がんに関する研究機関からの提言。2020年2月19日の時点で小児患者は300名程度であり、小児がん患者の感染症例に関するデータはほとんどありません。しかし小児がん患者は免疫抑制の状態であり、より影響を受けやすい状況にあり、入院前のスクリーニング、入院後の防御策、化学療法、放射線療法、手術、フォローアップに関しての戦略について考慮すべき点があり、提言を行っています。


Casanova M, Pagani Bagliacca E, Silva M, et al.

How young patients with cancer perceive the Covid-19 (coronavirus) epidemic in Milan, Italy: is there room for other fears? Pediatr Blood Cancer. 2020 Apr 2:e28318. doi: 10.1002/pbc.28318.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/pbc.28318
COVID-19パンデミックにおける若年がん患者(15~21才)の心理状態に関するイタリア・ミラノ国立がんセンターからの報告です。治療中の若年がん患者25名、フォローアップ中の若年がん患者25名、健康な若年者25名に対して、質問票による調査が行われました。健康者の大多数はコロナウイルス感染をほとんど心配していないのに対して、若年がん患者の多くは、重篤な合併症の発生を心配しており、その傾向は治療中の患者でより顕著に認められました。患者への衛生教育、感染防御に関する情報提供が重要と考えられます。


Hrusak O, Kalina T, Wolf J, et al.

Flash Survey on SARS-CoV-2 Infections in Pediatric Patients on anti-Cancer Treatment
Eur J Cancer. 2020 Apr 7 doi: 10.1016/j.ejca.2020.03.021
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7141482/
COVID-19感染が蔓延している地域にある小児がんセンターを対象に、化学療法中の小児症例における感染の実態をWebでの調査結果を速報しています。25か国32センターから約10,000症例のうち200症例以上にCOVID-19の検査が行われ、感染診断例は9例ありました。一部に好中球減少に伴う発熱を認めましたが、COVID-19感染に伴う症状は軽度なものしか認めませんでした。COVID-19の病状の重篤化には注意が必要ですが、COVID-19の予防治療が悪性腫瘍の治療の遅れや妨げにならないようにすべきと述べています。


2020 年5 月21 日掲載
Sullivan M, Bouffet E, Rodriguez-Galindo C, et al.

The COVID-19 PANDEMIC: A Rapid Global response for Children with Cancer from SIOP, COG, SIOP-E, SIOP-PODC, IPSO, PROS, CCI and St Jude Global
https://www.authorea.com/users/5588/articles/445428-the-covid-19-pandemic-a-rapid-global-response-for-children-with-cancer-from-siop-cog-siop-e-siop-podc-ipso-pros-cci-and-st-jude-global?commit=43d910681b467e87b9bb6d2f8695ce966cd12213
COVID-19パンデミック:SIOP, COG, SIOP-E, SIOP-PODC, IPSO, PROS, CCI, St Jude Globalからのガイダンス
2020年3月27日から4月17日までの3週間に小児がん医療にリーダーシップをとっている世界の各組織によって結集されたガイダンスである。
総論では、イタリアのロンバルジア地方における経験を示し、現時点では小児のCOVID-19に関する情報の中でも小児がんとCOVID-19に特化した情報は非常に少ないことを踏まえ、パンデミックの間は小児腫瘍学に基づいたエキスパートオピニオンによって推奨されるべき対応を結集してここに発信した。また新規の小児がん患者が同時にCOVID-19に罹患している場合は、例えば進行期の小児がんであれば癌に関しての正確な診断を行い、暫定的な治療を開始することが安全なアプローチであるかもしれないとする一方、先にCOVID-19の治療を行い、回復してから癌の治療を行うことも可能な疾患もあるとしている。これらの治療戦略は多診療科、多職種によるボードミーティング(それはテレカンファレンスを含めてだが)により決定することが重要であるとしている。
各論では、2018年のWHO Global Initiative for Childhood Cancer(GICC)で90%の生存率を達成することを目標にしている下記の主要6疾患に特異的なガイダンスと治療などの専門領域別のガイダンスに分けて(下記①-⑩)、それぞれにつき、詳細なエキスパートオピニオンが提供されてる。 さらに後半では支持療法やPPEに関すること、医療スタッフのケア、家族のケア、臨床試験に対する考え方なども示されている。

疾患特異的なガイダンス
 ① Acute Lymphoblastic Leukaemia(急性リンパ性白血病)
 ② Burkitt Lymphoma(バーキットリンパ腫)
 ③ Hodgkin Lymphoma(ホジキンリンパ腫)
 ④ Retinoblastoma(網膜芽腫)
 ⑤ Wilms tumor(ウィルムス腫瘍)
 ⑥ Low grade glioma(低悪性度膠芽腫)

専門領域別のガイダンス
 ➆ Radiotherapy(放射線治療)
 ⑧ Surgery(外科治療)
 ⑨ Palliative Care(緩和ケア)
 ⑩ Nursing (看護)


Balduzzi A, Brivio E, Rovelli A, et al.

Lessons after the early management of the COVID-19 outbreak in a pediatric transplant and hemato-oncology center embedded within a COVID-19 dedicated hospital in Lombardia, Italy. Estote parati Bone Marrow Transplant. 2020 Apr 20. doi: 10.1038/s41409-020-0895-4.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7167532/pdf/41409_2020_Article_895.pdf
イタリアロンバルディア地方におけるCOVID-19流行時の小児移植、血液腫瘍病棟における早期対策からの教訓 "常に備えよ"
入院時に上気道症状がある患者、および一部の病院では化学療法入院前に全例でPCR検査を実施している。少なくとも5名の小児がん患者でCOVID-19感染が判明したが、抗ウイルス薬なしで自然に軽快している。
対応策:外来部門では手指消毒の励行、リーフレットを用いた患者説明、長期フォローアップや良性血液患者の受診延期、ボランティア活動の中止の対策がとられている。血液腫瘍、移植病棟では、事前に病院長を含む対策室を設置し、COVID-19専属チームの立ち上げ、文献検索、PPEの確保、ゾーニング、患者スケジュール調整と遠隔管理、心理的サポートなどが実施されている。悪性腫瘍以外の幹細胞移植は延期され、ドナーはPCR検査を受けている。
治療上の問題点:小児がんの発見の遅れ、COVID-19感染時に消失までの期間が長い可能性が指摘されている。移植やCAR-T細胞治療では、ICUがCOVID-19の治療で不足すること、輸血・血液製剤の不足、トシリズマブの不足が問題点としてあげられている。


Sainati L, Biffi A.

How we deal with the COVID-19 epidemic in an Italian paediatric onco-haematology clinic located in a region with a high density of cases. Br J Haematol. 2020 Apr 16. doi: 10.1111/bjh.16699
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/bjh.16699
イタリアでの小児専門施設での対応についての報告
入院および外来に関連してトリアージを患者、介護者、医療スタッフにしっかりすることによって地域での陽性率が8.2%にもかかわらずこの論文執筆時点では陽性者はいないという結果であった。予防措置の重要性が示唆される。
翻訳版はこちら(この論文は全文を翻訳して掲載いたします)


He Y, Lin Z, Tang D, et al.

Strategic plan for management of COVID-19 in paediatric haematology and oncology departments. Lancet Haematol. 2020;7(5):e359‐e362. doi:10.1016/S2352-3026(20)30104-6
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352302620301046?via%3Dihub
中国からの小児血液・腫瘍部門におけるCOVID-19アウトブレイクのマネジメント
医療者がCOVID-19の最新情報を把握して、定期的に部門内にCOVID-19患者がいるかどうか評価すること、院内でCOVID-19の専門家委員会を確立すること、院内をゾーンに分けて管理することなどが提案されています。
Figureでは、トリアージによるゾーンの振り分けの道程がアルゴリズムの形で記載されています。また、入院患者に守らせるべきルールや化学療法合併症の呼吸器感染症に対する対応、患者とその家族へのCOVID-19予防に関する情報提供やケアの必要性等について提案されています。さらに、化学療法施行予定の患児に対する対応や、接触歴や臨床症状のある患者の取扱い、治療方針決定の原則が示されています。


Zhao Z, Yang C, Li C.

Stategies for patients with cancer during COVID-19 pandemic
Asia Pac J Clin Oncol. 2020 Apr 20. doi: 10.1111/ajco.13363
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ajco.13363
COVID-19蔓延期におけるがん患者の管理戦略についての提言
  外科的治療について緊急時は行うべきであり、他は蔓延状態や病院の状況で決定する。
   その際の血液製剤の確保は術前に保証されるべきである。
  化学療法は移動を減少するような対応が望まれる。
  放射線療法は線量が多い場合には骨髄抑制と感染リスクが高まる。
  病棟と外来管理は重要で、入院の際のフローを作成した。
  感染予防は特に厳重に対応すべきである。


Minotti C, Tirelli F, Barbieri E, et al

How is immunosuppressive status affecting children and adults in SARS-CoV-2 infection? A systematic review. J Infect. 2020 Apr 23. pii: S0163-4453(20)30237-1. doi: 10.1016/j.jinf.2020.04.026
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0163445320302371?via%3Dihub
免疫抑制状態にある小児・成人に対する新型コロナ感染症の影響の系統的文献レビュー
【概要】がん・臓器移植あるいは免疫不全により免疫抑制状態にある小児・成人に対する新型コロナ感染症の影響を16の英語論文(中国12, イタリア・スペイン・韓国・フランス各1)を用いて検討した文献レビューである。
【結果】患者数は110名であり、小児はその中の4名のみである。イタリアの小児肝臓移植患者200名中、新型コロナ感染症陽性は3名であったが、肺合併症はなく予後も良好であった.中国からの小児新型コロナ感染症の報告には白血病化学療法中の1名が含まれていたが、ICU入院は必要としたものの経過は良好であった。韓国における新型コロナ感染症死亡者54名の報告内に小児例は含まれていないが、合併症としての悪性腫瘍は7名(13%)で肺疾患・精神疾患と並んで第4位であった。
【まとめ】結論と並んでこの論文で注目すべき点を以下に列挙する。
 1. コロナ感染症一般に共通するが、免疫抑制状態だけであれば予後は影響を受けない。
   他の合併症と比べると予後は良好である。
 2. その理由として、免疫反応が(免疫抑制状態にあるため)弱く病態が穏やかであるため
   診断に至らない可能性が、一つの仮説として考えられている。
 3. その一方で、免疫反応が弱く診断に至らないため、新型コロナウィルスの保菌者(viral reservoir)
   として感染拡散の要因になる可能性がある。
 4. 現時点の情報に基づくなら、小児・成人いずれでも新型コロナ感染症を理由に臓器移植や
   悪性腫瘍に対する化学療法の開始あるいは継続を控える理由はない。


Ruggiero A, Romano A, Attinà G.

Covid-19 and Children With Cancer: Are They at Increased Risk of Infection?
Pediatr Res. 2020 Apr 23. doi: 10.1038/s41390-020-0919-1.
https://www.nature.com/articles/s41390-020-0919-1.pdf
小児のがん患者とCovid-19感染症のリスク
PubMed(Medline)で検索し得たのは59論文あったが、“化学療法”と“Covid-19”とマッチしたのは中国語での1論文のみで、臨床や疫学的な特徴や死亡症例の報告はなかった。アウトブレイクしている現状では、治療の遅延や不十分となる可能性にも配慮し、小児がんに関わる医療従事者は患者や家族とオンラインによるカウンセリングなどの情報交換を行う必要がある。Covid-19感染症のワクチンや治療薬ができるまでは、頻回の手洗い、マスクの装着、人込みや呼吸症状を持つ人とのコンタクトをさける、などの基本的な衛生管理を指導する重要がある。


Frieden IJ, Püttgen KB, Drolet BA, et al.

Management of Infantile Hemangiomas during the COVID Pandemic. Pediatr Dermatol. 2020 Apr 16. doi: 10.1111/pde.14196.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32298480/
米国Hemangioma Investigator Groupより、COVID-19パンデミック下での乳児血管腫管理に関する勧告
まず患児月齢、血管腫部位、進行度等に基づき緊急性を評価し、リスク層別化を行うことが重要です。次にアルゴリズムに従って対面あるいは遠隔の管理をすすめます。βブロッカー導入時は呼吸器系、心血管系の評価を含む対面診療が強く推奨されます。急速な成長段階にある場合は、1〜2週間以内の綿密なフォローアップが必要です。呼吸器や胃腸症状出現時には投薬を中止し、かかりつけ医に連絡するよう指導します。また、COVID-19感染の場合、感染症の症状が治まるまでβブロッカーを一時的に中止することをお勧めします。


2020年6月23日掲載
Iehara T, Manabe A, Hosoi H.

Statement on the prevention and treatment of COVID-19 in patients with pediatric cancer in Japan.
Pediatr Blood Cancer . 2020 Jun 22;e28440. Doi
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/pbc.28440
日本における小児がん患者への新型コロナウイルス感染症対応(予防と治療)ステートメント
小児がん患者は免疫抑制状態にあり、新型コロナウイルス感染(COVID-19)の高リスクであることが推定される。小児がん患者の新型コロナウイルス感染時の対応および予防策の具体的な指針をまとめた。これらは、本邦の爆発的な感染拡大(オーバーシュート)に向けて、政府が非常事態宣言を発するのを機に、現時点でのステートメント第一報を発するものである。

1.小児がん患者の初診時対応
咽頭痛、咳嗽、倦怠感、持続する発熱、嗅覚味覚異常を訴える者は、COVID-19を疑い,飛沫接触感染対策を行う。患者および家族が、新型コロナウイルス感染者との接触歴や、曝露リスクが高い場合には、新型コロナウイルス疑似症例として飛沫接触感染対策を行う。これらの患者に対しては、鼻咽頭スワブによるPCR検査によるスクリーニングが有用であるが、蔓延期には初回陰性であっても、潜伏期間を考慮して14日間の飛沫接触感染対策が望ましい。

2.自宅療養中の対応
外出時にはマスク着用の上、手指衛生の徹底を行う。病院が遠方の場合には、近隣施設での投薬や加療を考慮する。経過観察の検査は病状が安定していれば、間隔を伸ばして、病院への来院機会を減らす。

3.家族が陽性になった場合
直ちに患児を隔離し感染リスクを下げる。14日間の健康観察を行う。

4.診断
新型コロナウイルス感染の診断は鼻咽頭スワブ検体での新型コロナウイルスSARS-CoV-2陽性にて行われる。PCR陽性時、患者は陰圧がかかる部屋に隔離され、医療者は接触飛沫感染予防策を実施する。

5.COVID-19の治療
重傷度は4段階に分けられる。1,2に関しては、抗ウイルス薬の投与なしで注意深い観察を要する。小児がん治療中の患者で免疫抑制状態にある者は、新型コロナウイルス感染の急激な症状悪化がありうる。3の患者の関しては、抗ウイルス薬の投与を考慮する。

6.新型コロナウイルス感染者の小児がん治療
1)化学療法
PCR陽性患者への化学療法は避けるべきである。24時間あけての2回のPCR陰性確認後に開始することが望ましい。ただし、高リスクのがん患者はがん治療を優先すべきである。
2)放射線治療
PCR陽性患者への放射線療法は延期するべきである。24時間あけての2回のPCR陰性確認後に開始することが望ましい。ただし、新型コロナウイルス感染者で患者の状態が1(軽度)の場合は、放射線療法の施行も考慮される。新型コロナウイルス感染の患者が放射線治療を受ける際には、他の治療者との接触を避け、できればその日の最後に行う事がのぞましい。医療者は飛沫接触予防策を行い、患者退出後は患者の接触面を70%以上のアルコール製剤で清拭を行い、十分な換気を行う。
3)外科手術療法
PCR陽性患者への手術療法は延期するべきである。24時間あけての2回のPCR陰性確認後に開始することが望ましい。但し、腫瘍に対する手術療法を行わなければ生命の維持が困難等の理由により、緊急性を要する手術に関しては、以下の事項に注意して手術を実施する。手術場は陰圧隔離された個室を利用する。手術に携わる人員は必要最低限にする。気管挿管時には大量のエアロゾルが発生するのでN95マスクにゴーグルまたはフェイスシールド、キャップ、長袖ガウンの個人防護具を用い、適切な飛沫接触予防策を実施する。
4)幹細胞移植
PCR陽性患者への手術療法は延期するべきである。24時間あけての2回のPCR陰性確認後に開始することが望ましい。蔓延期においては、ドナーおよびレシピエント供に新型コロナウイルスのPCR検査陰性を確認した後に採取、移植を行うことが望ましい。
5) 画像検査
PCR陽性患者に画像検査が必要な場合は、超音波検査などのベッドサイドでの診断方法を優先する。単純レントゲンはポータブルが望ましい。CTやMRI、シンチグラフィーなどの検査が必要な場合は、患者と他の患者との接触を避ける。患者はマスク着用で移動し、検査者は個人防護具を用い、適切な飛沫接触予防策を実施する。


Taub JW, et al .

COVID-19 and childhood acute lymphoblastic leukemia
Pediatr Blood Cancer. 2020 Jul;67(7):e28400. doi
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7235492/pdf/PBC-9999-e28400.pdf
新型コロナウイルスと小児のALL
グリーブスモデルではALLは2ヒットによって発症し、第1ヒットの出生前の遺伝的変化に加え、第2ヒットはウイルス感染と推定されている。COVID19の流行に伴い、社会が閉鎖され子ども達が隔離されたことで、インフルエンザ等の季節性呼吸器ウイルス感染の機会が激減した。筆者らはこのことによって将来ALLの発症が減るかが、疫学調査によって明らかになるであろうとしている。


Lassandro G, Palladino V, Palmieri VV, Amoruso A, Del Vecchio GC, Giordano P.

Covid-19 and Children with Immune Thrombocytopenia: Emerging Issues
Mediterr J Hematol Infect Dis. 2020 May 1;12(1):e2020028. Doi
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7202345/pdf/mjhid-12-1-e2020028.pdf
COVID-19とITPについて
ITPは、CMV、EBV、パルボウイルス、麻疹、風疹、で関連があるとの報告がある。現在の所COVID-19とITPの発症を示唆する報告はない。逆にITPに関連する、免疫抑制療法(高用量ステロイド、リツキサン、など)の感染への影響も他のウイルスと同等であると考えられる。新規診断ITPに対しては、疫学的な観点からも発熱がある場合、COVID-19検査を行い、関連について調べることを提案する。


Ruggiero A, Romano A, Attinà G.

Facing the COVID-19 outbreak in children with cancer
Drugs Context. 2020 May 12;9:2020-4-12. Doi
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7224358/pdf/dic-2020-4-12.pdf
小児がん患者とCOVID-19アウトブレイクについて
小児がん患者とCOVID-19アウトブレイクについての短い論説です。小児がん患者とCOVID-19に関する簡単な文献の調査がなされ、著者の経験に基づいてCOVID-19アウトブレイク下でがんの治療を受ける患児のマネジメントについて提案がなされています。また、がんの子どもに行動や衛生に関する教育が必要であると提案されています。


Boulad F, et al

COVID-19 in Children With Cancer in New York City
JAMA Oncol. 2020. PMID: 32401276
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7221844/
ニューヨークにおける小児がん患者とCOVID-19に関する報告
ニューヨークのMemorial Sloan Kettering Cancer Centerで治療中の小児がんの患者およびその介護者のCOVID-19感染率を調査した報告である。結果は(1)小児がん患者のうちCOVID-19感染治療のために入院が必要になるものは5%と低い割合であった。(2)無症状の小児がん患者におけるCOVID-19感染率は非常に低かった。(3)無症状の介護者におけるCOVID-19感染率の高さが感染コントロールの上からは問題である。(4)成人と同様、小児がん患者においてもCOVID-19感染率は男性に有意に高い傾向が認められた。


Zhao Y, et al.

FIRST CASE OF CORONAVIRUS DISEASE 2019 IN CHILDHOOD LEUKEMIA IN CHINA
Pediatr Infect Dis J . 2020 May 12. doi
https://journals.lww.com/pidj/Abstract/9000/FIRST_CASE_OF_CORONAVIRUS_DISEASE_2019_IN.96166.aspx
中国から小児急性リンパ性白血病治療中のCOVID-19に関する報告
中国より、初の小児急性リンパ性白血病治療中のCOVID-19感染症に関する報告です。3歳男児。維持療法中である2020年1月22日に、祖父宅を訪問。23日から咳嗽出現。2月1日に祖父がCOVID-19感染と診断されましたが、この時点で児のPCRは陰性。2月10日より38度台の発熱を認め入院、11日(症状出現より20日後)にPCR陽性となりCOVID-19感染が判明しました。幸い入院翌日には解熱、呼吸器症状の重症化はなく2月18日にPCR陰性を確認し退院しておりますが、その後も咳嗽が続きました。診断までに長期間要し、隔離期間延長を余儀なくされました。基礎疾患をもつこどもへの積極的なPCR検査と早期の対症療法が望まれます。


Sieni E, Pegoraro F, Casini T, Tondo A, Bortone B, Moriondo M, Azzari C, Galli L,
  Favre C.

Favourable outcome of coronavirus disease 2019 in a 1-year-old girl with acute myeloid leukaemia and severe treatment-induced immunosuppression
Br J Haematol. 2020 May 5. doi: 10.1111/bjh.16781.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bjh.16781
イタリアより小児急性骨髄性白血病治療中のCOVID-19に関する報告
イタリアより、小児急性骨髄性白血病治療中のCOVID-19感染症に関する報告です。1歳女児。3コース目治療後の骨髄抑制期にあわせて予定入院。全身状態良好。入院時(Day1)のルーチン検査にて便中PCR陽性であり隔離を開始しました。Day3に39度台の発熱と軽度の肺炎像が出現、抗生剤投与、対症療法を行い、CRPはDay7の7.2mg/dl以降ピークアウト、Day9に解熱しました。Day18に骨髄回復を認め退院しましたが、Day28の経鼻スワブPCRは陽性でした。同時期に小児がん患児170例にPCR検査を行い無症候の4人に陽性反応を認めました。今回、急性骨髄性白血病治療中、重症免疫不全状態でのCOVID-19感染症、肺炎合併ではありましたが酸素を必要とすることもなく経過は良好であり、発熱性好中球減少症の経過をみていた可能性もあります。原疾患治療の継続も重要なことであり、COVID-19感染の鑑別をしながら慎重にすすめていく必要があります。


Terenziani M, Massimino M, Biassoni V, Casanova M, Chiaravalli S, Ferrari A,
  Luksch R, Meazza C, Podda M, Schiavello E, Spreafico F.

SARS-CoV-2 disease and children under treatment for cancer
Pediatr Blood Cancer . 2020 May 6;e28346. doi: 10.1002/pbc.28346
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7235501/pdf/PBC-9999-e28346.pdf
小児がん治療中のこどもへの新型コロナウイルス感染症の影響
イタリアでの新型コロナウイルス流行期に、ミランを中心としたLombardia地方での、小児がん治療中の小児(21歳以下)での新型コロナウイルス感染症の治療へ影響を報告した。
診療に影響した症例は、13歳のEwing肉腫症例で、父が新型コロナウイルス感染症に罹患したため、治療延期となった1例のみであった。今後状況の変化については情報を共有して、小児がん治療への影響をなるべく避ける対応をすることが重要である。


Ferrari A, et al.

Children with cancer in the time of COVID-19: An 8-week report from the six pediatric onco-hematology centers in Lombardia, Italy
Pediatr Blood Cancer. 2020. PMID: 32452123
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/pbc.28410
小児がん治療中のこどもへの新型コロナウイルス感染症の影響(6施設、8週間の報告)
イタリアLombardia地方の小児がん診療6施設の8週間(2020年2月20日から4月15日まで)において、347例の新規入院と4138例の外来受診があった。そのうち新型コロナウイルス検査陽性例は21例で、10例は白血病、5例は骨軟部腫瘍、2例はリンパ腫、2例は肝芽腫、1例は中枢神経系腫瘍、1例は大腸がんであった。12例は無症候性、9例が症候性であった。15例が治療中であったが、10例に化学療法の延期や減量、手術の延期が必要であった。2例に新型コロナウイルス関連の合併症を認めた。これらを踏まえて、適切で冷静な対応が今後も求められる。


André N, et al.

COVID-19 in pediatric oncology from French pediatric oncology and hematology centers: High risk of severe forms?
Pediatr Blood Cancer. 2020. PMID: 32383827
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7235489/pdf/PBC-9999-e28392.pdf
フランスにおける小児がん患者とCOVID-19について
4月16日時点でフランス国内30カ所の小児がん治療センターで33名がPCRあるいはCTにてCOVID-19と診断・治療されていた.ICU治療を要したのは5名.4才と13才の男児および19才女児は再発B cell ALL治療で免疫抑制状態にあり、13才男児は同種HSCTを受けたばかりであった.別の5才女児は鎌状血症で同じく同種HSCT治療後に感染、最後の7才女児は進行性高悪性度グリオーマで全身状態不良であった.現時点(4/17)で死亡例はなく、1名はすでにICU退室している.これだけで結論づけるのは時期尚早であり、今後さらなるデータを集める予定である.
小児がん患者におけるCOVID-19は少ないと思われるが、通常のこどもと較べ重症化の危険性が高いことを認識する必要がある.
(HSCT: hematopoietic stem cell transplantation)


Verdú-Amorós J, Bautista F, Rubio-San-Simón A, Grasa Lozano CD, Madero L,
  de Rojas T.

Comment on: “Early advice on managing children with cancer during the COVID-19 pandemic and a call for sharing experiences”
Pediatr Blood Cancer. 2020 Jul;67(7):e28377. doi: 10.1002/pbc.28377.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/pbc.28377
COVID-19感染症禍における小児がん患者への早期の対応と経験の共有について
2020年4月15日現在、世界では約185万人の症例が確認され、そのうち2番目に影響を受けているスペインでは、17万人以上の症例と1万8千人以上の死亡者(19歳未満の死亡者は0.5%未満)が確認されている。迅速抗体検査はSARS-CoV-2に対する宿主免疫反応に基づいており、安価で時間もかからない(10-30′)が、以下のような問題点がある。(a)血清学的検査は、発病後2週目に血清転換が起こるため、COVID-19の早期診断には有効性が限定。 (b)感度と特異度に幅あり。(c) ウイルス株間の交差反応性により、偽陽性結果を示すことあり。(d) 免疫反応の大部分は結合抗体に依存で中和抗体に依存していないため、陽性結果は保証できない。(e)抗体の上昇は、呼吸器分泌物中のウイルス量のゆっくりとした低下と一致。免疫不全の患者では、さらに以下を考慮。(a) 血清学的免疫反応は弱くなる可能性があり、潜伏期間に関するデータが不足。(2)潜在的に感染している無症状の献血ドナーがいるため、輸血依存患者の中には血清学的手法だと陽性誤診される可能性あり。
これらのことから小児および青年がん患者の管理についてのSIOPガイドラインの「検査の推奨」の章では、PCR検査が望ましいと考える。


de Rojas T, Pérez-Martínez A, Cela E, Baragaño M, Galán V, Mata C, Peretó A,
  Madero L.

COVID-19 infection in children and adolescents with cancer in Madrid
Pediatr Blood Cancer. 2020 Jul;67(7):e28397
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7235530/pdf/PBC-9999-e28397.pdf
マドリードにおける小児がん患者とCOVID-19について
COVID-19の発生率は、小児は診断された症例の1〜5%を占め、マドリードでは0.8%である。2020年4月15日までにマドリードでCOVID-19の感染が証明されたすべての小児がん患者(0~18歳)15例の特徴は表1参照。年齢中央値は10.6歳(範囲0.6~18.6)。血液腫瘍11例(73%)と固形腫瘍4例(27%)であった。4例(27%)は造血幹細胞移植を受けていた(COVID-19感染までの中央値209日、範囲113~749)。COVID-19感染の15日前に化学療法を受けていた患者9例(60%)。化学療法は 6例(40%)で中断または遅延。COVID-19感染による入院は7例(47%)、既に入院(院内感染)していた患者は4例(27%)、外来で管理していた患者は4例(27%)。最も多かった症状は発熱10例(67%)、咳6例(40%)で、2例は無症状。
胸部X線検査はほとんどの患者14例(93%)で実施。そのうち8例(57%)に病理学的所見が認められた。注目すべき検査所見は診断時の白血球数中央値3195(範囲90~10 690)、リンパ球数中央値580(範囲0~6310)、D-ダイマー中央値 291 ng/mL(範囲 0.7~2620)であった。
ほとんどの患者(11例、73%)がヒドロキシクロロキンを投与されたが、そのうち3人はそれと他の組み合わせ(アジスロマイシン、トシリズマブ、ロピナビル・リトナビル、コルチコイド、レムデシビル)で治療。4例(29%)の患者は治療を受けていない。治療に関連した有害事象は確認されなかった。2例が2L/分以下の経鼻カニューレ酸素療法を必要とし、そのうちの1例はまだサポートを必要としている。すべての患者はこれまでのところ、良好な臨床結果をたどっているが、4例はまだ入院したまま。入院期間の中央値は8日間(範囲 3~26)であった。
マドリッド地域の小児腫瘍患者は1140人であり、COVID-19のパンデミック感染における最初の2ヶ月間でこの患者集団の1.3%の割合にあたる発症であった。すべての患者をPCRで検査したが、これは引き続きゴールドスタンダードであり、我々の意見では、小児腫瘍学的集団における迅速血清学的検査で代用すべきではないと考えている。成人がん患者におけるCOVID-19感染の有病率は、一般集団よりも高いと報告されている(1% vs 0.29%)。小児がん患者における感染有病率については、これまでに確たるデータは存在していない。
心配な所見は、院内感染を呈した患者の割合が高いことである(27%)。スペインの医療従事者の感染率は世界で最も高く、これが院内感染の割合を説明しているのかもしれない。臨床所見、放射線学的所見、検査所見は、これまでに発表された一般的な小児集団のデータと類似している。
小児がん患者におけるCOVID-19感染症の治療法としては、支持療法を超える確固たるエビデンスはないが、安全性の高いヒドロキシクロロキンが最も頻繁に使用された薬剤であった。すべての患者はこれまでのところ軽度中等症で良好な転帰を示し、酸素療法を必要としたのは2例のみであり、一般的な小児集団のデータと一致していた。
結論として、マドリードの小児がん患者におけるCOVID-19感染の有病率は1.3%である。この患者集団はハイリスクとして管理されているが、臨床的特徴は成人集団よりも軽度で予後は良好である。


Vasquez L, Sampor C, Villanueva G, Maradiegue E, Garcia-Lombardi M,
  Gomez-García W, Moreno F, Diaz R, Cappellano AM, Portilla CA, Salas B,
  Nava E, Brizuela S, Jimenez S, Espinoza X, Gassant PY, Quintero K,
  Fuentes-Alabi S, Velasquez T, Fu L, Gamboa Y, Quintana J, Castiglioni M,
  Nuñez C, Moreno A, Luna-Fineman S, Luciani S, Chantada G.

Early impact of the COVID-19 pandemic on paediatric cancer care in Latin America
Lancet Oncol. 2020 May 18:S1470-2045(20)30280-1. Doi
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7234788/pdf/main.pdf
中南米諸国における小児がん患者とCOVID-19について
中南米諸国における小児がん患者の治療に対するCOVID-19 パンデミックの影響について、2020年4月12-19日に地域横断的にLatin American Society of Pediatric Oncology (SLAOP)のemail listおよびSt Jude Global reginal partnersを通じ調査を行った。
20か国、453名の小児血液がん医師から回答があり、サーベイランス89%、外来治療58%、がん手術45%、放射線治療33%、外来診療26%、幹細胞移植73%、緩和医療19%にそれぞれ延期や遅れがあった。さらに36%の症例では薬剤不足により化学療法レジメンが変更された。6割の回答者からはCOVID-19の感染や隔離に伴い小児血液がんのスタッフが減ったと報告があった。79%が血液製剤の不足を訴え、特に移動制限強い、感染率高値の地域、医療費がGDPの7%以下の地域にその傾向が強かった。中南米でCOVID-19感染拡大が早期でhealth-care systemがまだ影響を受けていない状況下でも、小児がん患者の治療が腋様を受けていることが明らかとなった。


2020年9月24日掲載
Hongbo Chen, Hui Li. Yining Qiu, et al.

A flowchart strategy for children with leukemia during COVID-19: A nondesignated hospital’s experience.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28563.
https://doi.org/10.1002/pbc.28563
武漢におけるCOVID-19流行期の小児白血病患者への対応フローチャート
武漢の小児施設において、88名の小児白血病外来患者に対するCOVID-19感染への対応をまとめたフローチャートが掲載されている。流行状況、症状の有無、胸部CT所見、他の抗原検査の結果にてスコア化し、入院前に、入院して化学療法施行可能か、ウイルス性肺炎の治療を行うべきか、あるいはCOVID-19感染症として治療専門病院への転送が必要かを判断した。88名中2名がこのフローチャートにてCOVID-19陽性と診断でき、臨床的な対応策として有用であった。

Ai Zhang, Qun Hu, Aiguo Liu, et al.

Prevention of COVID-19 infection in a pediatric oncology ward in Wuhan.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28424.
https://doi.org/10.1002/pbc.28424
武漢の小児腫瘍病棟におけるCOVID-19感染の予防
2020年1月23日から3月27日の間に武漢同済病院の血液腫瘍科に化学療法目的で入院した44人について、入院時にCOVID-19のスクリーニングと感染防止教育を行い、評価した。全ての患者と家族のPCRと抗体検査は陰性であった。6人は胸部CTで異常を指摘されたが、COVID-19に起因するものではなかった。適切な感染防止対策はCOVID-19感染を防ぐことができる。臨床所見や胸部CT所見など疑わしい症状を呈する患者の場合には、総合的な検討が必要である。

Jeffery J Auletta, Peter C Adamson, Jonathan E Agin, et al.

Pediatric cancer research: Surviving COVID-19.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28435.
https://doi.org/10.1002/pbc.28435
小児がん研究:COVID-19の存続
米国Nationwide Children’s Hospital, BMTチームからの報告です。小児がん関連者および専門家会議にて、COVID-19流行を背景にした小児がん研究の課題について議論されました。特に、a)トランスレーショナルリサーチが小児がんの転帰を変える上で果たした役割、b)小児がん研究に対するCOVID-19の現在および将来の影響、c)免疫、発がんおよび治療上の発見に適用される可能性のあるCOVID-19研究の対象領域、d) COVID-19流行中、後においても小児がん研究を維持するための将来の考慮事項と方向性、について、です。COVID-19により医療だけでなく社会、経済、全ての面で大きな影響をうけました。我々の使命は、マイナス体験から学んだ教訓を活かし、小児がん研究を科学的および経済的に継続的にサポートすることです。

Ido Didi Fabian, Andrew W Stacey, Richard Bowman, et al.

Retinoblastoma management during the COVID-19 pandemic:A report by the Global Retinoblastoma Study Group including 194 centers from 94 countries.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28584.
https://doi.org/10.1002/pbc.28584
COVID-19パンデミック下の網膜芽細胞腫治療:− 94か国194施設からなる国際網膜芽細胞腫研究グループからの報告
パンデミックが世界的に拡大している2020年3月29日から4月4日までで実施された世界中の194の網膜芽細胞腫治療センターからのCOVID-19の影響に関する調査でです。COVID-19パンデミックのため、104施設(53.6%)で麻酔下検査や摘出・化学療法などの治療が制限されるなど、網膜芽細胞腫治療に影響を及ぼす変化がありました。また約40%で家族のセンター来訪が制限され、約40%でアウトブレイク中に人員や設備の確保に混乱が生じました。これは結果的に、世界的に網膜芽細胞腫の患児が生命の危険にさらされていることを示しています。彼らの治療は、危険な世界的なウイルスの発生に直面しても、依然として優先事項であります。

Tyler S Severance, Mahvish Q Rahim, James French II, et al.

COVID-19 and hereditary spherocytosis: A recipe for hemolysis.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28548.
https://doi.org/10.1002/pbc.28548
COVID-19と遺伝性球状赤血球症:溶血時のレシピ(手順)
遺伝性溶血性疾患である遺伝性球状赤血球症(HS)は無症候性から慢性溶血までの幅広い症状を有する。中等度の脾臓摘出歴のない鎌状赤血球型のHSの既往歴を持つ4歳の男児がCOVID-19陽性となり検査値と溶血についての関係を報告した。この症例から、COVID-19に罹患した溶血のリスクのある患者を注意深くフォローする必要性を強調している。追跡できる溶血マーカーとしてビリルビン値、フェリチン、LDH(溶血中に放出されるアイソザイムとしてLDH-1、LDH-2)がある。この症例のように、赤血球膜欠損症患者におけるヘモグロビン値のモニタリングと溶血マーカーの重要性が強調される。広くCOVID-19検査が開始された場合、基礎となる溶血性疾患があるCOVID-19陽性患者は溶血のスクリーニングを受けるべきである。HSには溶血の重症度に差がありCOVID-19感染症で最初の溶血イベントが発生する可能性がある。

Jiabin Cai, Lili Zheng, Danni Lv, et al.

Prevention and control strategies in the diagnosis
Pediatric Hematology and Oncology, online.
https://doi.org/10.1080/08880018.2020.1767740
COVID-19パンデミック下における小児固形腫瘍に対する治療戦略
本論文はCOVID-19パンデミック下における固形腫瘍に罹患した患者に対する治療戦略について中国の浙江大学医学院附属児童医院からの提言をまとめたものである。特に固形腫瘍は治療戦略の一つとして外科的治療を必要とするが切迫した症状や生命にかかわる状況において必要とされる緊急手術は許容し、また必要であるが日程調整可能な予定手術は化学療法と化学療法の間2週間の間に合理的に計画するなど、さらに急がない待機的な手術は延期する、など疾患の状況と必要性に応じて手術適応を決定する基準の作成を行った。また治療の中心となる化学療法はできるだけ継続できる標準的レジメを作成する。一方、放射線治療は延期が可能と考慮される場合はそのような対処も行うというようなマネージメントである。その他、入院や外来の患者についてどのように診療していくべきかなどのフローチャートを作成し、提案している。

Yang-Yang Ding, Sneha Ramakrishna, Adrienne H Long, et al.

Delayed cancer diagnoses and highmortality in children during the COVID-19 pandemic.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28427.
https://doi.org/10.1002/pbc.28427
COVID-19パンデミック期の小児悪性腫瘍診断の遅延による重症化
COVID-19パンデミック期に、USの3次医療機関2施設において、新規小児腫瘍患者の受診が一定期間途絶えた後に、蘇生処置を要するような重症化した症例が立て続き、急性期の死亡例も認められた。いずれの患者もCOVID-19は陰性であった。また、このような新規小児腫瘍患者のPICU入室の割合も増加している。これは医療機関受診の遅れや、腫瘍による症状(発熱、倦怠感、呼吸器症状等)がCOVID-19に類似していることによる対応の遅れが重症化の原因となっており、身体所見の確認ができない遠隔医療の限度も考えられる。通常の小児腫瘍の生存率の良さを考慮すると、これらのCOVID-19パンデミックの二次的な医療ケアへの影響は注目に値する。

Veronika Bachanova, Michael R. Bishop, Parastoo Dahi, et al.

Chimeric Antigen Receptor T Cell Therapy During the COVID-19 Pandemic.
Biol Blood Marrow Transplant. 2020; 26: 1239-1246.
https://doi.org/10.1016/j.bbmt.2020.04.008
COVID-19パンデミック下のCAR-T細胞療法
COVID-19パンデミックはCAR-T細胞療法の実践においても極めて重大な影響を及ぼしている。CAR-T細胞コンソーシアムの経験をもとに、COVID-19パンデミック下でのCAR-T細胞投与の問題点について、6つの項目に分けてレビューを行っている。(1)安全な投与に必須のリソース:アフェレーシス、運搬、製造、化学療法を実施する医療機関、投与後のICUの収容状況、輸血、検査、放射線診断、提供者、遠方で治療を実施する際のハウジングの確保など細分化され検討される必要がある。(2)臨床試験を含めた治療の制限:安全性を証明する第1相試験の延期。長期的治療効果を見る第2相試験については実施可能であれば慎重に実施。標準治療と比較するCAT-Tの第3相試験についてはパンデミック下では延期が望ましい。(3)再発及び難治性B細胞非ホジキンリンパ腫・B細胞急性リンパ性白血病細胞の患者さんの治療適応:多変量解析で予後不良因子であるPSの低下、LDH上昇を有する患者への治療延期、さらなる治療適応への基準を検討する必要がある。(4)REMSガイドラインを含めた治療中の支持療法の取り決め。(5)トシリズマブ使用の優先度、少なくとも2回の投与分の確保、grade 2 CRS時の早期導入。(6)テレメディスンを利用した患者紹介システムの活用、治療に関わる紹介元、専門施設による連携とケアの構築。これらの推奨は流動的であり、CAR-T細胞療法を真の根治療法として必要としている患者への遅れとならないよう、危険性と利益と十分に議論する必要がある。

Marta Marcia, Barbara Vania, Giulia Pruccoli, et al.

Acute lymphoblastic leukemia onset in a 3-year-old child with COVID-19.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28423.
https://doi.org/10.1002/pbc.28423
3歳の急性リンパ性白血病の初発時にCOVID-19感染を合併した1例
COVID-19と小児白血病を同時に発症した児の治療は困難かつ注意を要する。症例は、3歳男児、初診時白血球数85230/μL、ヘモグロビン5.7g/dL、血小板数1.9万/μL、CNS陰性common ALLと診断された。母親が無症状でSARS-Cov-2陽性であった。児に気道症状はなく、胸部CTは正常であったが、鼻咽頭スワブを用いた検査でSARS-Cov-2陽性であった。COVID病棟に入院し、ステロイド、化学療法によるウィルス感染症の増悪を懸念し、ロピナビル、リトナビル、ハイドロキシクロロキンによる治療を開始、ALLは直ちに致命的とならないと判断し水分負荷と輸血を行った。4日目にSARS-Cov-2陰性を確認して、AIEOP-BFM ALL2017プロトコールによるステロイド先行相を開始、良好な治療反応を得て治療を行っている。著者らは4日目の段階で白血球数26680/μLまで低下していたことについて、HIVプロテアーゼ阻害剤の小児白血病に対する殺細胞効果について言及している。一例一例、適切な治療開始時期と抗ウィルス薬の使用について決定することが重要と述べている。

Michele Loi, Brian Branchford, John Kim, et al.

COVID-19 anticoagulation recommendations in children.
Pediatr Blood Cancer. 2020; e28485.
https://doi.org/10.1002/pbc.28485
小児COVID-19において推奨される抗凝固療法
COVID-19では、血栓症と播種性血管内凝固(DIC)がしばしば引き起こされる。成人ではDICスコアとDダイマーが強力な予後予測因子であり、小児でもこれらの検査値を血栓症の病態評価に用いることが推奨される。小児において基礎疾患がCOVID-19による血栓症のリスクになるかどうかは不明であるが、成人と同様にリスクを日毎に評価して抗血栓療法の予防実施について検討する。血栓症のリスク因子としては以下があげられる。①血栓症または静脈血栓塞栓症(VTE)の既往歴、②VTEの家族歴、③中心静脈ラインの留置④思春期以降の年齢、⑤ベースラインからの活動性低下、⑥熱傷、⑦活動性の悪性腫瘍、⑧静脈うっ血または心拍出量低下兆候、⑧エストロゲン療法、⑨活動性の全身感染、⑩炎症性疾患のフレア、⑪肥満、⑫重度の脱水症、⑬直近の手術または外傷。

Yunus M Akcabelen, Ayca K Yozgat, Asli N Parlakay, et al.

COVID-19 in a child with severe aplastic anemia.
Pediatr Blood Cancer. 2020;67: e28443.
https://doi.org/10.1002/pbc.28443
小児重症再生不良性貧血におけるCOVID-19
原発性または後天性免疫不全の小児におけるCOVID-19の臨床経過に関するデータは少ない。本稿では、COVID-19を発症した再生不良性貧血症例を報告する。14歳男児。重症型の再生不良性貧血に対してHLA一致ドナーからの造血幹細胞移植の待機中であり免疫抑制療法は実施されていない。2日前からの発熱、咽頭痛、鼻出血を主訴に受診。COVID-19疑いの患者と接触歴あり。胸部CTでは肺炎像なし。リアルタイムPCRの結果COVID-19と診断され入院。抗菌薬投与と輸血による治療を開始し入院2日後に解熱。経過中に呼吸症状の増悪はみられず、入院15日後に退院。
系統的レビューでは、110人の免疫抑制患者は、他の併存症と比較した場合に良好な転機であったと報告されている。免疫不全状態にある患者は、COVID-19の重症化に影響する炎症反応が制限されているために、予後良好である可能性が示唆された。


2021年2月4日掲載
Niccolo Parri, Matteo Lenge, Danilo Buomsenso, et al.

Children with Covid-19 in Pediatric Emergency Departments in Italy.
N Eng J Med. 2020; 383, 187-190.
https://doi.org/10.1056/NEJMc2007617
イタリアの小児救急におけるCOVID-19小児例
イタリアでCOVID-19の感染が急速に広まった2020年3月3日から27日の間に、17の救急病院でCOVID-19 と診断された18歳未満の小児100人のデータを過去のデータと比較検討した。年齢の中央値は3.3歳で、感染経路不明は55%であった。54%が37.6℃以上の発熱があり、主な症状は咳(44%)、食思不振(23%)であった。
4%の児の酸素飽和度が95%未満で、9人は人工呼吸器治療を受けた。死亡例はいない。この集団では家族内感染が過去の報告データより少なかったが、これはイタリアの後期ロックダウンの影響と考えられる。この集団では、中等症や重症の患者が少なかったが、CTではなく主にベッドサイドのレントゲン検査で診断したためと思われる。

Victoria Flores, Raquiel Miranda, Laura Merino, et al.

SARS-CoV-2 infection in children with febrile neutropenia.
Ann Hematol. 2020, 99, 1941-1942.
https://doi.org/10.1007/s00277-020-04115-1
発熱性好中球減少症における新型コロナウイルス感染症
メキシコにおける小児ALL3症例(4~8歳)が発熱性好中球減少症時に新型コロナウイルス感染症に罹患した。3例とも発熱と呼吸器症状が主で、同種造血幹細胞移植後で免疫抑制療法中の1例が呼吸不全となり呼吸管理を行ったが突然の心停止にて死亡している。生存例2例はDICに対して抗凝固療法を要したが、回復した。今回は3例のみの報告であるため、今後多症例での解析が必要である。

Gianni Bisogno, Massimo Provenzi, Daniele Zama, et al.

Clinical Characteristics and Outcome of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Infection in Italian Pediatric Oncology Patients: A Study From the Infectious Diseases Working Group of the Associazione Italiana di Oncologia e Ematologia Pediatrica.
J Pediatr Infect Dis Soc. 2020; 9, 530-534.
https://doi.org/10.1093/jpids/piaa088
イタリアにおける小児がん患者のSARS-CoV-2感染の臨床的特徴と転帰:イタリア小児血液がん学会(the Associazione Italiana di Oncologia e Ematologia Pediatrica)感染症WGからの報告
(和訳要旨) 小児がん患者のSARS-CoV-2感染の転帰については、まだほとんど知られていない。イタリアでの流行ピーク時にSARS-CoV-2感染症と診断された小児がん患者 29 例(女児16例、男児13例、年齢中央値7歳[範囲:0~16歳]、化学療法・免疫療法中(26例)、幹細胞移植後(3例))を対象に、臨床的特徴と転帰に関する情報を収集した。患者の内訳は白血病が16例(リンパ芽球性14例、骨髄性2例)、リンパ腫が3例(ホジキン2例、非ホジキン1例)、固形腫瘍が10例、ランゲルハンス細胞組織球症が1例であった。
すべての症例で経過は軽度であり、症状があったのは12例のみ(うち3例は肺炎)で、集中治療を必要とするものはなかった。入院患者は15例で、うち7例は無症状であった。9例(うち5例は症状なし)にはヒドロキシクロロキンが投与され、そのうち3例にはロピナビル/リトナビルが投与された。
化学療法・免疫療法を受けていた26例のうち,16例では中央値26日(範囲:15~68日)で治療が中断されたが,8例では化学療法が継続され,2例では治療レジメンをわずかに変更し施行された。SARS-CoV-2感染は、小児がん患者では成人の患者よりも軽度な臨床経過をたどるようである。
特異的な SARS-CoV-2治療は、ほとんどの小児には不要と思われる。我々の知見を鑑み、必要な注意を払いつつも、COVID-19に罹患したが無症状あるいは軽微な症状の小児がん患者では計画された抗がん剤治療の大幅な変更は避けることを提案する。

Raya Saab, Anas Obeid, Fatiha Gachi, et al.

Impact of the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Pandemic on Pediatric Oncology Care in the Middle East, North Africa, and West Asia Region: A Report From the Pediatric Oncology East and Mediterranean (POEM) Group.
Cancer. 2020; 126, 4235-4245.
https://doi.org/10.1002/cncr.33075
COVID19下での中東、北アフリカ、西アジア地区における小児がん診療に対する対応:POEMグループからの報告
19か国、34施設のサーベイを基にCOVID19パンデミック下の対応をまとめた。2020年4月の調査である。すべての施設で治療延期の調整やスタッフの配置や削減、social distanceの実行、消毒法、防御設備などについてガイドラインが用いられていた。化学療法、外科治療、放射線治療などは29-44%の割合で延期されていた。
また24%の施設は新患の受け入れを制限していた。28%の施設で医療の提供に影響を受けたとした。70%以上の施設で輸血製剤の不足、47%以上の施設で手術が、また62%の施設で放射線治療の影響を受けた。一方、病床について影響を受けたのは30%以下にとどまったが、これは調査を行った施設ではCOVID19の患者が入院していた割合が低かったためであろう。小児がんに対しての影響がどの程度あるのかは、再度評価されるべきである。

Qian Zhang, Paul Bastard, Zhiyoung Liu, et al.

Inborn errors of Type I IFN immunity in patients wwith life-threatning COVID-19.
Science. 2020; 370, eabd4570.
http://science.sciencemag.org/content/370/6515/eabd4570
重症COVID-19患者におけるI型インターフェロン関連先天性免疫異常症
TLR3,IRF7,IRF9関連の先天性免疫異常症が致死的なインフルエンザ肺炎を発症することから、I型インターフェロン(IFN)誘導経路である計13の遺伝子座に注目をして、重篤なCOVID-19肺炎患者と軽症者に対してエクソームもしくは全ゲノム解析を実施した。重症患者659名のうち23例(3.5%)(17歳から77歳)において8遺伝子、24の有害変異を認めた。内訳としてIRF7、IFNAR1の両アレルの機能欠損変異(AR)を4例に認め、TLR3、UNC93B1、TICAM1、TBK1、IRF3、IRF7、IFNAR1、IFNAR2の片アレルの機能欠損変異(AD)を19例に認めた。
先天性免疫異常症として知られるその他の417遺伝子に変異は認めなかった。一方、軽症者534名では、1例において重症者と異なるAD変異が見つかったのみであった。In vitroの検証によるI型IFNの産生障害だけでなく、in vivoの検証として感染時の血清中IFN-αの測定を行い、 AR変異例(IRF7、IFNAR1)、AD変異例(IRF7、TLR3、TBK1、TICAM1)では優位に低下していることが示された。
これらの遺伝子欠損型変異の患者では感染早期にI型IFNの投与を行うことが有益かもしれないと述べている。

Paul Bastard, Lindsey B Rosen, Qian Zhang, et al.

Autoantibodies against type I IFNs in patients with life-threatning COVID-19.
Science. 2020; 370, eabd4585.
http://science.sciencemag.org/content/370/6515/eabd4585
重症COVID-19患者におけるI型IFNに対する自己抗体
I型IFNに対する中和自己抗体がCOVID-19の重症化に関与するという仮説を検証した。
COVID-19肺炎で入院した重症患者987例、SARS-CoV-2に罹患した無症候/軽症患者663例、COVID-19流行前に収集した1227例の健常検体を用いてI型IFNに対する中和自己抗体を測定した。重症者987例のうち101例(10.2%)はI型IFN-α2およびIFN-ωに対する中和自己抗体を有していた。これらの自己抗体はin vitroでSARS-CoV-2をブロックするI型IFNを中和することが示された。
同自己抗体は無症候/軽症患者には存在せず、健常者1227例では4例(0.33%)のみに検出された。自己抗体が検出された患者の年齢は25~87歳であり、半分以上が65歳以上であった。自己抗体が検出された101人のうち95人が男性であった。
以上の結果からI型IFNの先天異常はCOVID-19重症肺炎の原因になりうることが示された。同結果はリスク患者の同定および血漿交換、形質芽球除去、組換えI型IFN等の治療方法の考案に有用である。

Isabera Meyts, Giorgia Bucciol, Isabella Quinti, et al.

Coronavirus disease 2019 in patients with inborn errors of immunity: An international study.
J Allergy Clin Immunol. 2020; in press
https://doi.org/10.1016/j.jaci.2020.09.010
原発性免疫不全症症例における新型コロナウイルス感染症の国際臨床研究
COVID-19感染症に罹患した原発性免疫不全症94症例の臨床所見を多施設国際共同研究としてまとめた。
18歳以下は32例で、53例が抗体産生不全症、14例が複合免疫不全症、9例が免疫調節不全症、7例が自己炎症性疾患などであった。
10例が無症状、25例が外来管理、28例が入院のみ、13例が酸素吸入、18例がICU管理を要し、死亡例は9例(成人7例、小児2例)で小児例はCGD(細菌感染合併)とXLP(HLH合併)症例であった。30%以上は軽症で、リスク因子は基礎疾患のない患者群とほぼ同等であったが、特に低年齢での罹患率や重症化率が高い傾向にあった。XLAでは必ずしも重症化しないこと、高IgE症候群はIL6シグナル伝達不全のため軽症例のみであったこと、自己炎症性疾患は免疫抑制療法を受けているため軽症例が多かったこと、IFNシグナル異常症は自己抗体陽性例とともに重症化する傾向があったことが示された。