7. 研修プログラムについて

作成日:2012.10.11
更新日:2023.01.18

小児血液・がん専門医研修プログラム作成要項

小児血液・がん専門医(以下専門医)の認定を申請する者は、日本小児血液・がん専門医制度規則(以下規則)第13条に規定されるように、「24か月以上本学会の専門医研修施設に所属し、定められた研修カリキュラムを修了している」必要があります。 また、専門医研修施設に認定されるためには、規則第40条8項に規定されるように、「本学会が定める研修カリキュラム作成要項に基づいて研修カリキュラムが作成され公表されていること」が必要です。 これらの規定に従い、専門医研修施設の認定を申請する施設(以下施設)は、以下に示す小児血液・がん専門医研修プログラム作成要項(以下作成要項)に従い自施設の研修プログラムを定めて下さい。

日本小児血液・がん専門医研修施設研修プログラム_施設群の場合(No.6-3)(PDF)
日本小児血液・がん専門医研修施設研修プログラム_単独の認定研修施設の場合(No.6-4)(PDF)

令和4年2月15日付
施設群内での定期会合についてのおしらせ

施設群内での共通の活動には、下記の定期会合を含めていただくことをお願いします。
【施設群内の定期会合とは】
1). 2か月に1回以上を目安とする。
2). 症例の診断や治療方針についての具体的な検討や、専攻医の研修上の問題点、
病院間の連携に関わる諸問題を話し合うことを目的とする

詳しくはこちらをご参照ください。

作成要項

  1. (目標・方略・評価)施設は、自施設の教育方針に則り、作成要項に従い研修プログラムを作成してください。研修プログラムでは目標・方略・評価を具体的に明らかにしてください。

  2. (研修対象者)研修対象者を明らかにしてください。

  3. (資格の要件)

    1)(小児科専門医)専門医認定申請には、基本領域の専門医である小児科専門医の資格が必要です。研修対象者が小児科専門医取得前の場合には、研修に並行して小児科専門医の取得が可能です。
    (例:研修プログラムに、「小児血液・がん専門医取得に必要な小児科専門医を取得するための準備を並行して行う」などの記載をし、指導を行う。)

    2)(がん治療認定医または血液専門医)専門医認定申請には、がん治療認定医の資格または血液専門医の資格が必要です。がん治療認定医の取得前または血液専門医の取得前の場合には研修に並行してがん治療認定医または血液専門医の取得が可能です。
    (例:研修プログラムに、「小児血液・がん専門医取得に必要ながん治療認定医または血液専門医を取得するための準備を並行して行う」などの記載をし、指導を行う。)

  4. (研修期間)専門医研修プログラムに規定する研修期間は24か月以上としてください。

  5. (人的資源)指導にあたる小児血液・がん指導医(以下指導医)、小児血液・がん暫定指導医(以下暫定指導医)、専門医、小児がん認定外科医・小児外科専門医、放射線治療専門医・放射線診断専門医、病理専門医などについて明らかにしてください。 また研修責任者を明らかにしてください。 小児がん認定外科医・小児外科専門医および放射線治療専門医・放射線診断専門医は、診療協力施設に在籍する場合も可です。 この場合には診療協力施設名を明らかにしてください。 指導医・暫定指導医および病理専門医は自施設に在籍する必要があります。

  6. (その他の資源:自施設・診療協力施設・連携施設)研修プログラムが自施設で完結可能か、それとも他施設の協力や連携が必要かを明らかにしてください。
    協力とは、外科治療あるいは放射線治療あるいは造血幹細胞移植治療が自施設で行えない場合には、あらかじめ登録された診療協力施設と協力して治療を行うことを意味しています。 診療協力施設で治療が行える場合には、施設としての認定要件を満たすことが認められます。 この場合には診療協力施設名を明らかにしてください。 診療協力施設は専門医研修施設であることは問いません。 しかし、外科治療あるいは放射線治療の診療協力施設には、小児がん認定外科医・小児外科専門医や放射線治療専門医・放射線診断専門医が常勤で在籍している必要があります。
    また、自施設で研修が完結しない項目については、他の専門医研修施設と連携して補完する必要があります。 例えば、自施設では非腫瘍性血液疾患(血友病やITPあるいは好中球減少症や貧血など)の研修ができない場合には、他の専門医研修施設で研修するなどの連携を行い、プログラムに連携施設名と研修項目を明らかにしてください。

  7. (研修単元)小児血液疾患および小児がんの子どもたちに質の高い専門医療を提供するために必要な幅広い知識と十分な経験および練磨された技能を習得するために必要な研修単元の大項目は以下の通りです。 これらの項目について知識・態度・技能を習得するように研修プログラムを作成してください。

    1. 血液学総論
    2. 赤血球
    3. 白血球
    4. 免疫異常
    5. 血小板
    6. 凝固
    7. 腫瘍学総論
    8. 造血器腫瘍
      1)白血病
      2)非ホジキンリンパ腫・ホジキンリンパ腫
      3)組織球症
    9. 固形腫瘍
      1)骨肉腫
      2)ユーイング肉腫
      3)網膜芽細胞腫
      4)神経芽腫
      5)肝腫瘍
      6)腎腫瘍
      7)横紋筋肉腫・軟部腫瘍
      8)胚細胞腫瘍
      9)稀な腫瘍
    10. 脳脊髄腫瘍
    11. 治療学総論
    12. 輸血療法
    13. 細胞療法
    14. 緩和医療
    15. 晩期障害長期合併症
    16. 倫理・研究
  8. (臨床経験)規則第13条6項と日本小児血液・がん専門医制度細則(以下細則)第8条には、専門医認定申請には、「臨床経験を有すること」を求めています。 これを証明するために、細則第8条では、診療チームの一員として診断・治療を行った症例のうち重複しない30例の症例一覧の提出と、そのうちの15例の個別症例票の提出を求めています。 この項目についての詳細は以下の通りです。

    • 1)診療チームの一員とは、細則第8条に「診断や治療の方針決定に参加し、治療中に治療指示や病状説明を行った者をいう。」と規定されています。 研修に際しては、施設の研修方針に従いつつ、この点に特段の配慮をお願いいたします。 (例えば、整形外科が主科となって治療を行っている骨肉腫症例や脳外科が主科となって治療を行っている脳腫瘍症例などの臨床経験の際に診療チームの一員として実際に診断治療に参加できるような体制整備など)

    • 2)診療チームの一員として治療にあたった症例のうち、1例として算定できる条件のうち経験施設についての規定は以下の通りです。
      (1)腫瘍性疾患(造血器腫瘍および固形腫瘍)については専門医研修施設で経験(診断および治療)した症例でなければなりません。専門医研修施設でない施設での経験は認められませんので、研修プログラム作成の際には注意してください。
      (2)非腫瘍性血液疾患あるいは造血幹細胞移植については、指導医(暫定指導医)のもとで経験した症例であれば、経験した施設の専門医研修施設の認定の有無を問いません。しかし、指導医がいない施設での経験は認められませんので、研修プログラム作成の際には注意してください。
      (3)自施設での研修では必要経験症例の研修が完結しない場合には、他の専門医研修認定施設と連携して補完するように研修プログラムを作成してください。例えば、自施設では脳腫瘍の診療を行っていない、骨肉腫の診療を行っていないなどの場合。ただし専門医制度施行開始5年間は、以下5)に示すように、細則の付則に定める暫定措置が認められます。

    • 3)診療チームの一員として治療にあたった症例のうち、1例として算定できる条件のうち病態についての規定は以下の通りです。
      (1)腫瘍性疾患(造血器腫瘍および固形腫瘍)
          ① 初発未治療患者の診断と治療
          ② 再発患者の再発直後の治療入院
          ③ 終末期
      (例えば初発未治療のALL患者が寛解となった後に再発し一定の治療経過の後に終末期となった場合などは、それぞれの病期で特異的な診断・治療を研修したと考え1例ずつ最大3例として算定できます。)
      (2)非腫瘍性血液疾患(先天性・後天性凝固障害、鉄欠乏性貧血を除く赤血球疾患、非腫瘍性白血球系疾患、血小板異常、輸血合併症、免疫不全症など)(ただし血管性紫斑病は除きます。)
          ① 初発未治療患者の診断と治療(外来での研修も含む)
          ② 合併症や特殊治療
      ②については、例えば長期間外来で治療を継続している非腫瘍性血液疾患患者で、感染症のための入院、造血幹細胞移植、出血性疾患での手術や外科的治療の止血管理のための入院、免疫学的治療など特殊な治療での入院、外来での止血管理などが算定できます。
      (3)同種造血幹細胞移植症例

    • 4)臨床経験30例の疾患別内訳は以下の通りです。
      (1)造血器腫瘍 10例以上
      (2)固形腫瘍 10例以上
      (3)非腫瘍性血液疾患 5例以上
      (4)かつ上記および同種造血幹細胞移植症例の合計が30例以上とする。

    • 5)上記30例のうち、個別症例票には15例の記載が必要です。 そのうちの10例には、以下(1)に記す疾患を各1例以上含めることが求められています。
      (1)細則第8条の規定
      急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、小児外科腫瘍(神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、胚細胞腫瘍のうち一つ)、骨軟部腫瘍、脳腫瘍、鉄欠乏性貧血を除く赤血球疾患、血小板異常、凝固異常、同種造血幹細胞移植症例

    • 6)上記1)~5)に記されたように、必要な臨床経験が完結できるように研修プログラムを作成してください。 また臨床経験達成の大まかな見込みを作成してください。

  9. (知識の習得)知識習得のためのプログラムとして、施設内での講義やセミナー、あるいは規則第13条7項に規定される研修実績としての学会・教育セミナーへの出席についてプログラムに規定する必要があります。この項目についての詳細は以下の通りです。

    • 1)各単元ごとの知識習得には、院内の講義やセミナーだけでなく、学会が主催する教育セミナーや教育セッションあるいは関連学会でのセミナーや研究会などを幅広く利用してください。 他施設の教育セミナー等の利用も可能です。

    • 2)日本小児血液・がん学会が研修実績として認定する学会やセミナーに参加する大まかな計画をプログラムに記載してください。 専門医認定申請までに合計研修単位が100単位以上となるように研修ができるように調整する必要があります。 これらの研修実績のうち細則第6条に規定されていない関連学会や研究会を研修実績として申請する場合には、その関連学会や研究会が事前に別途申請・審査を受けている必要があります。

    • 3)大まかな計画を、学習方法・順序・資源(人的・物的・予算)などを考慮して作成してください。

  10. (態度・習慣の習得)専門領域の学会発表および論文作成、各種カンファランスへの出席・討議参加、臨床研究の計画立案・実行、各種登録作業などについてプログラムに規定する必要があります。この項目についての詳細は以下の通りです。

    • 1)専門医受験申請時の直近の5年間に、小児血液または小児がんに関する学会発表を3件行っている必要があります。これには筆頭演者としての発表を1件以上含まなければなりません。

    • 2)専門医受験申請時の直近の5年間に、血液学・小児腫瘍学に関連した論文を3編作成している必要があります。このうち1編は筆頭著者としての原著論文が必要です。 論文はpeer review systemのある学術雑誌に掲載された論文に限られます。症例報告も含まれます。印刷中のものは認められません。e-pubで先行して公表されたものは認められます。

    • 3)施設内あるいは連携施設との小児がんカンファランス・CPC・緩和ケアチームとのカンファランス、こども療養支援者や教育支援者とのカンファランスなど各種カンファランスに参加する必要があります。

    • 4)医療倫理や医療統計、臨床研究についての研修を行うことが必要です。

    • 5)院内がん登録、日本小児血液・がん学会の疾患登録・TRUMPなどの登録についての研修を行うことが必要です。

  11. (評価)施設内で、研修のフィードバックを行うことを目的とした形成的評価を行ってください。 何を、誰が、いつ、どのように評価するかを規定してください。 最終的な総括的評価は学会が行う専門医認定試験がありますが、施設でも研修が修了したと判定できるかどうかの総括的評価を行ってください。